翌8月19日朝、目覚めると外は土砂降りの雨。とうとう降られてしまった。
iPhoneで雨雲レーダーを見ると低気圧が北海道から南下して東北地方北部を覆っている。この先の深浦では、記録的な雨量とのニュース。これはまずい!五能線が不通になると、身動きが取れなくなる。
おまけに今日の予定は、十二湖周辺のトレッキングで、ガイドの案内まで手配している。それでも、予定通り決行という、雨など関係ないという感じだ。覚悟して、レインコートに宿で借りた長靴姿で出発。宿のバスでコースの一番奥まで行き、ここから4時間のトレッキングスタート。
十二湖というが、実際には湖沼は33もある。それではなぜ十二湖なのか? 一説には、大崩という山の頂上からから見たときに湖沼が12見えることからそう呼ばれているらしい。
トレッキング参加者は、3組7名。ガイドさんはてっきり全体で1人かと思っていたら、3人(女性2、男性1)も付いて、コース別に行動するという。我々のガイドは、西田さんという65歳の男性。元深浦町の役場勤務だったそうで、ガイド歴7年。結構軟弱なご様子で、今日は白神山地のほうの登山ガイドを頼まれたが、もうきついのでこちらに変えてもらったとのこと。それを聞いて、さらに軟弱なこちらとしては何だか安心した。
<鶏頭場(けとば)の池)
「鶏頭場の池」から傘をさして歩き始めたら、それに合わせたように雨が次第にあがってきて、現生のブナ林を歩き、人気の「青池」へ。
名称の通り、水が青く見えて不思議な光景だ。緑の水面はよくあるが、こういう色は見たことがない。しかし、あいにくの曇りで光線が弱く鮮明度が足りない。晴れた時には真っ青なコバルトブルーになる。その日、目にすることのできないものは、ガイドさん持参のアルバムを開いて自分で撮影した写真を見せてくれる。
<仲道の池>
<水が冷たいので、川の流れに霧が発生する>
途中、数々の植物や樹木の名前をいろいろ教えてもらいながら、「沸壺(わきつぼ)の池」、「落口の池」、「仲道の池」、「日暮の池」、「王池」と巡る。
渡り鳥の「アカショウビン」や「ヤマセミ」がいるらしいが、いずれも「カワセミ」の仲間。「アカショウビン」は、赤いくちばしにオレンジ色の羽の美しい鳥で、見られるとよかったのだが、大震災のあった2011年以降なぜかめっきり減ったとのことだ。関連性はよくわからない。
最後に1702年の宝永地震で崩れてできた「日本キャニオン」の麓まで案内してもらった。ここは凝灰岩が露出しており、雨が降ると粘土質の白い岩が溶けて濁川に流れ出て、まさに灰色の濁流となる。
トレッキングを終えてお昼頃、十二湖の駅までバスで送ってもらうと、駅は人でごった返していた。
午前中の雨で案の定、五能線のダイヤは大幅に乱れており、運休列車も出て、その代行バスが停まっていた。前の上り(秋田方面行)「リゾートしらかみ2号」が既に1時間遅れで、まだ到着してない。単線なのでこの上り列車が岩舘駅で交換(行き違い)して、はじめて我々が乗車する下りの「リゾートしらかみ3号」がやってくることになる。相当の待ち時間になった。じたばたしても仕方がないので、タクシーでリゾート施設の「アオーネ白神」まで買い物に出かけた。
幸い20分ほどの遅れで「リゾートしらかみ3号」に乗車し、五所川原へ向かう。このあと、津軽鉄道で太宰治の生誕地金木(かなぎ)を訪ねる予定だ。この遅れだと乗り継ぐ津軽鉄道の列車に遅れてしまうのは明らか。次は1時間30分待ちになるが、それを覚悟した。
ところが、この観光列車には、遅れを挽回する隠し技があった。1日目に記述のイベント第2弾は、千畳敷駅に停車時の千畳敷海岸散策である。ちょうど雨だったためか、いとも簡単にそのイベントを中止して停車時間の15分を挽回にまわした。イベントと遅れ挽回とどちらを優先するのか、この判断は難しいところとも思ったが、列車が遅れた場合にはイベントは中止するというルールのようにみえた。
3番目のイベントは、1号車のイベントスペースで行われる津軽三味線の演奏だ。実施しますとアナウンスしておきながら、突然中止の再放送でがっかり。これは遅れ挽回とは関係ないはずだが。せっかくの1号車指定席だったのでかぶり付きで聴けると思っていたら、拍子抜けした。
思わぬ挽回のおかげで、五所川原での津軽鉄道への乗換接続はうまくいき、1両のレールバス、20分の乗車で金木へ到着。津軽鉄道列車内の女性アテンダントが、本当に親切で、地図をいただいたり周辺情報を教えてくれた。
金木には2時間しかいられない。早速、訪問予定の太宰治が戦時中疎開していた住居(新座敷)へ向かう。
アテンダントが、新座敷を先に訪問したほうがいいですよと、アドバイスしてくれていた。私も、生家の斜陽館よりこちらの住居のほうに興味があった。現住人の白川さんが太宰の小説に登場する場面と関連付けて、詳しく丁寧に説明してくれて理解が進んだ。帰り際、Woodpecker-Mは、早速、売店で「短編集」と「津軽」の文庫本2冊を購入した。
時間がなくなり、斜陽館のほうは、建物を見るだけで見学は出来なくなった。
今日は五所川原の駅近くのホテル泊。晴れていれば、お隣、鶴田町の「鶴の舞橋」まで行きたかったが、五所川原駅に戻ったら豪雨に見舞われて駅で雨宿り。とても傘をさして歩けないほど。断念して雨が小降りになるのを待ちホテルへ直行した。
(最終日に続く)